桐生悠々-日米戦前の言論 [歴史]
まるで、21世紀のブロガーに向けて書かれたような、「言いたい事と言わねばならない事と」、浅薄な国防論を揶揄する「関東防空大演習を嗤う」。 (青空文庫より)
- 『将来若し敵機を、帝都の空に迎えて、撃つようなことがあったならば、それこそ人心阻喪の結果、我は或は、敵に対して和を求むるべく余儀なくされないだろうか。』『如何に冷静なれ、沈着なれと言い聞かせても、また平生如何に訓練されていても、まさかの時には、恐怖の本能は如何ともすること能わず、逃げ惑う市民の狼狽目に見るが如く、投下された爆弾が火災を起す以外に、各所に火を失し、そこに阿鼻叫喚の一大修羅場を演じ、関東地方大震災当時と同様の惨状を呈するだろうと』『敵機を関東の空に、帝都の空に、迎え撃つということは、我軍の敗北そのものである。』(関東防空大演習を嗤う)
- 『言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。尤も義務を履行したという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。
しかも、この義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う。少くとも、損害を招く。現に私は防空演習について言わねばならないことを言って、軍部のために、私の生活権を奪われた。』(言いたい事と言わねばならない事と)
いまから70年前に、このような言論人・桐生 悠々がいました。 本土が「戦時(有事)」になれば、日本は即ち敗戦である、と、日米戦前に見通していたということをが、慧眼だと私は思います。これが拙論「国民安全保障戦略と日本国憲法9条 」に影響を与えています。
- 作者: 桐生 悠々
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1989/10
- メディア: 文庫
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